「文豪シリーズ」芥川龍之介氏誕生日記念イラスト&キャラクタートーク
こんにちは、スタッフMです。
本日3月1日は、芥川龍之介氏の121回目のお誕生日です!
吉本ルイス先生に記念イラストを描いて頂きました☆
吉本先生、ありがとうございます!!
さらに、書き下ろし特別キャラクタートークをお届けします!
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またまた夏目家――
芥川「(ガラッと引き戸を開け)夏目先生、芥川です。ご在宅でしょうか」
夏目「(書斎から大声で)おう、芥川くんか。妻は今留守にしているから、適当に上がりたまえ」
芥川「ありがとうございます」
夏目「……こうして突然訪ねてくるということは、また何か心配事かね?」
芥川「いえ、今夜、先生が案内して下さるといううなぎ屋まで、ご一緒したいと思いまして」
夏目「それは構わんが、約束の時間までまだだいぶ間があるじゃないか?」
芥川「いえ、その……恥ずかしながら、僕は犬が苦手なので……」
夏目「……?それが、約束より3時間も早くここへ来ていることとどんな関係が?」
芥川「……犬の散歩に出る人が多くなる夕暮れ時は、往来を出歩かないようにしていまして……昼過ぎから家を出たのですが、外に一人で居るのも落ち着かず、先生のお宅へ足が向いてしまいました……」
夏目「君の犬嫌いは徹底しているなあ……! 何がそんなにダメなんだい」
芥川「何というか、こう……僕を見て笑っているような、不気味さを覚えるのです……一時期は、まったく怖く感じなくなったりもしたのですが、最近またぶり返しまして……はあ……(溜息)」
夏目「主人に忠実で、愛嬌のある生きものだと思うがなあ。我が家のヘクトーはいい犬だぞ!……まあ、それはそれとして。芥川くん、今日は君の誕生日だろう。おめでとう」
芥川「えっ……夏目先生、わざわざそんな……ありがとうございますっ!!(土下座)」
夏目「あああ芥川くん、そんな風に頭を床にめり込ませんでくれ……! 今日はその祝いにと思って夕食に誘ったんだが、結局こちらまで来させてしまって悪かったね」
芥川「いえ!犬の件がなくても、今日は金曜なのに夏目先生からお誘い頂いて、嬉しくて昨夜からろくに眠れなかったので、どちらにしろお宅までお迎えに上がるつもりでした!」
夏目「楽しみでって君……まったく、何度誕生日を迎えても、そういう律儀というか真面目なところは変わらんのだなあ」
芥川「尊敬する方に礼儀を払うのは当然のことです!!」
夏目「クールに見えて、情熱的なところもあるな君は……昔、詩人の萩原朔太郎くんの作品を起き抜けに読んで、感動して寝間着のまま、顔も洗わずに萩原くんの家まで飛び込んでいったことがあったんだって? 普段礼儀正しい君がって、萩原くんも大層驚いていたらしいじゃないか」
芥川「あれは……!萩原くんの『郷土望景詩』があまりにも素晴らしく、いてもたってもいられなくなってしまいまして……!」
夏目「ははは。まあ、それくらい自分に正直になれるのはいいことだ」
芥川「お恥ずかしい限りで……」
夏目「いやいや。君の真面目すぎるというか、周囲の目を気にする性質を、昔は心配にも思ったもんだからな、少し安心したよ。学生だった君に、手紙で「牛におなりなさい」と言ったことがあったろう。人は馬のように早く、花火のように華やかになりたがるものだが、焦らず根気よく、牛のようにゆっくりと進むのが一番さ」
芥川「もちろん覚えていますよ!先生から頂いたお手紙は、大切に残してあります!」
夏目「って今もかね!?」
芥川「はい、もちろんです! 夏目先生は手紙を残しておかれないので……?」
夏目「ああ、私は全て燃やしてしまうたちで……って(ハッとする)」
芥川「……………(どんより)」
夏目「いや! 別に君の手紙がいらなかったとか、そういうわけじゃないんだ! い、いやー、それにしても芥川くんは筆まめだからなあ、さぞたくさんの手紙を保管しているんだろうねえ!」
芥川「学生時代は、とにかく寂しい気持ちを紛らわすために、手紙を書いていましたね……友人に一度、「君が恋しい」とまで書き送ってしまって、後で破棄してくれるように頼んだこともありました……」
夏目「君はハンサムで友人も多いのに、何をそんなに不安がるのかねえ」
芥川「育った家庭のことが大きいかもしれませんね……」
夏目「端から見れば、華やかな青年にしか見えなかったと思うぞ。学生時代から大恋愛をして、所帯を持ってからもいろんな女性とも浮名を流したそうじゃないか」
芥川「せせせ先生、どどどこでそんな話を……!」
夏目「当時は君はブロマイドも販売されていたろう。ハイカラだ、美人だと評判だったなあ(ニヤニヤ)」
芥川「……も、もうやめて下さい……」
夏目「いいじゃないか、二枚目はうらやましい限りだ(ニヤニヤ)」
芥川「……! 夏目先生だって、ロンドン留学中に“ハンサムジャップ”と褒められたそうじゃないですか!“ハンサムな日本人”という意味ですよね!?」
夏目「…………」
芥川「…………えっと……その、夏目先生?」
夏目「…………君、それは“日本人にしては”という意味だ…………」
芥川「え、あ、その……でもハンサムなことには変わりなく……」
夏目「~~今日はうなぎをおごってやるつもりだったが、気が変わった! 私は蕎麦を食いに行ってくる!(ドスドス出ていく)」
芥川「ああっ! 待って下さい夏目先生、僕はうなぎでなくても先生とご一緒できるなら幸せですから……っ! ってこの下り、つい最近もやった気がするんですが……っ 先生~!」
バタバタと出ていく二人―――
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ハンサムでエリート、でも悩みは尽きなかった芥川龍之介氏。
詩に感動して萩原氏の家に飛び込んでしまったり、生姜はお腹が下ると聞いてから生姜ケーキを食べただけでお腹を下してしまったりと、真面目すぎるが故に天然?と思えるエピソードがたくさん残っています!
芥川龍之介先生、お誕生日おめでとうございます~!!!